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iPhone 5を巡るキャリア間の競争が激化する中で生まれた新たなビジネス

昨日、SoftBank孫正義社長がLTEサービスにおけるテザリングの解放を「検討します」と宣言し、本日15時から緊急記者会見が行われた。ユーザもかなり注目していたようで、Twitterとかすごいことになっていた。

内容は既に多くのサイトで紹介されているため後で概要だけ紹介し詳細は割愛するが、簡単に言えば孫社長も認めた通り「後出しジャンケン」によるau(KDDI)への対抗措置だ。ただ、この会見の中で少し注目したい事があった。それは「キャリアによるスマートフォンリセール市場の構築」だ。

この記事の掲載内容は、2020年12月21日時点の情報です。現在の情報とは異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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au(KDDI)への対抗措置

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内容としてはざっくり言えば以下のようなものだ。

  • 月額525円でテザリングオプションの提供。このオプションを適用するとデータ通信量は7GBから7.5GBに。サービス開始は2013年1月15日(予定)
  • iPhone 5ユーザ向けには「パケットし放題フラット for 4G LTE」の5,460円で利用でき、2年間までテザリングオプションは無料(「パケット定額 for 4G LTE」ではテザリングオプション設定不可だが、従来通り通信量制限はなし)
  • 「24 時間通話定額オプション」を500円で提供
  • 「4G/LTE スマホBB割」提供
  • 「スマホ下取りプログラム」拡充。iPhone 4Sの買取価格は12,000円から容量毎に16,000円~20,000円に

1つ目から4つ目はauでいう「LTEフラット」・「通話ワイド24」・「スマートバリュー」の丸パクリ。
auはiPhone 5発売直後からテザリングなどに対応するが、SoftBankは本日発表されたサービスの多くは2013年1月開始と遅れる。この事からもauの事前準備がいかにしたたかで、SoftBankが慌てて対抗したのかが伺える。

また「4G/LTE スマホBB割」も対応する事業者が少なく、auのように自社はもちろん電力系の光回線・ケーブルテレビなど既にかなり多くの事業者と提携しているわけではないため、利用にあたってのハードルの高さが全く違う。

スマートバリューも結局固定とセットで売ってしまえば儲かるというビジネスモデルなわけで、単なる安売りじゃない。多分、LTEで料金を高くする事は決まっていただろうから、ユーザが感じるであろう割高感をいかに補うかを考えた結果生まれたんだろうが、今年に入ってからのauは本当にすごい。

通信業界をリードしているのは?

携帯業界を大きくしたのはdocomoだと思うが、3・4年前からはSoftBankがリードしていたと思う。ホワイトプランやホワイト家族24によるキャリア内通話無料、スーパーボーナスで使った分を還元するという携帯端末割賦購入、そしてiPhoneをいち早く導入しガラケーからスマートフォンへのパラダイムシフトを起こした。

でも、ここ1年くらいはauだと思う。今回SoftBankが発表した内容もほとんどはauへの対抗。auが対抗値下げすれば対抗値下げすると孫正義社長は徹底抗戦の構え。でも、逆に言えばそれしか出来なくなってしまったとも言える。もはやチキンレースの様相を呈しているのでどこまで行くかは謎だが、おそらく大きくは変らない。LTE時代の料金はほぼ決まったと言える。

そんな中で今回SoftBankが新たに始めたビジネスはスマートフォンの買取だ。これは大注目。

スマートフォンのリセール市場

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本日の会見で孫正義社長は「下取りしたものは、日本国内で使うことは考えていない」と明言したそうだ。じゃあどうするかと言えば海外で売るに決まっている。

フィーチャーフォン(ガラケー)は日本国内でしか売れず、高価な割に買取価格がそれほど高くなかったため、ほとんどの人はキャリアショップで引き取ってもらったり、そのまま家に放置していた。従って、ヤフオクなどの取引は多少はあったものの、ガラケーのリセール市場は小さいものだったと思う。しかし、スマートフォンはiPhoneを筆頭にグローバルモデル。日本で使っていたものは海外でも使えるし、SIMフリーiPhoneがもてはやされるように逆もまたしかり。

スマホ時代になり日本でもリセール市場は広がってきているが、日本はまだまだ先進国なので中古携帯を使う人は少ないだろう。しかし、発展途上国などの海外に目を向けたら話は全く変る。数年前のモデルでも中古iPhoneが安く買えるなら、買う人は多いはず。

これ、分かりやすい話では車が該当すると思う。車は日本国内でもリセール市場が成り立っているし、海外でも同様だ。特に新車で車を買い替えた事がある人は分かると思うが、下取り価格がどんどん上がって行くことがある。で、その謎を聞くと、ディーラー独自のネットワークで高く売れる所を探していたりするわけで、その先は海外であることが多いと以前聞いたことがある。

僕なんかは車に強いこだわりがないので、実用性や買い替えた時にどれくらいの価値が残るか(=高く買い取ってもらえるか)を重視する。そうなると一昔前はカローラ、今ならプリウスみたいなベタな車になるんだろうが、特にトヨタの営業マンは「この車なら10年後でも十分売れますよ」なんて事をよく言う。気にする人が多い証拠だと思う。そんな営業トークに負けて、車好きにはつまらないと言われるトヨタ車を僕は毎回買うわけだがw

数年前、母親がニュージーランド旅行に行った時、一番驚いたのは日本ではもう見かけなくなった10年/20年前の「トヨタ車」が沢山走っていた事だと言っていた。古くなっても価値がある・使えるというブランド力と信頼はリセール市場においては特に重要。

そういう意味でiPhoneというのは恐ろしく強力なデバイスだと思う。そして、同時に日本で良くあるキャリアカスタマイズを受けまくった機種、エヴァモデル・ジョジョモデルなんていうコラボレーションモデルというのは少なくともリセール市場においては価値を持たなくなる。

また、海外中心のリセール市場においてはおサイフケータイ、ワンセグ、赤外線なんて機能ほとんど必要とされない。リセール市場が日本でも拡大すれば、iPhoneとグローバルモデルのAndroidが今以上に強くなるわけで、日本の携帯メーカーはますます苦しくなるように思える。そういう意味でキャリアによる端末買取ビジネスが成功するかは非常に気になる。

auから激しい追い上げを受けて、iPhone 5では少なくとも初動はauが勝利しそうな状況だ。そんな中でキャリア発の新たなビジネスモデルを作るSoftBankというか孫正義氏はしたたかというか、すごいなと改めて思った。ただ、端末内の情報を完璧に消去する方法を考え(iOSにある初期化だけじゃ完璧には消えないとか)そこをちゃんと伝えないと、個人情報流出とかでこれが命取りになる諸刃の剣でもある。

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2件のコメント

今日は仕事が午前で終わって午後2時に帰宅できたので、孫社長の会見をニコニコLIVEで視聴できました。
前半は『LTEやプラチナバンドによるauとの比較』で後半は『iPhone5の提供サービスの紹介』です。
細かいことは別として、これまでのSBの販売戦略の大幅な見直しを迫られていると感じました。
記者の質問で『既存ユーザーと乗り換えユーザーへのフォローが厚く、新規ユーザーフォローが手薄く感じる』との指摘にも明確なコメントが無く、この狭い日本でのスマホユーザー獲得が既に架橋に入っていると感じ取れてきました。
孫社長が自ら『後出しじゃんけん』コメントもそうです。
『チキンレース』の言葉通り事が進みそうで少し怖い気もしますが、来年3月期決算でau、SB、そしてドコモそれぞれどんな実績を残せるか興味が出てきました。笑
最後に笑うのは何処なのか?そして我々ユーザーはどんなサービスを提供してもらえるのか楽しみですね。

p.s.:記者の人から『SIMフリーへの見解』の質問が無かったのが残念でした…

まずはiPhone 5発売後1ヶ月程度で、どちらの販売数が多いか、そして10月あたりの書くキャリアの加入状況が見物です。
今回SoftBankからauに移る人が多くてその逆はほとんど無いでしょうし、どの程度動いているでしょうねぇ。そしてiPhoneにおいては全く存在感がないdocomoがどうなるか、、、