総務省有識者の提言でMNP優遇に歯止め?問題点と高額キャッシュバック変わる次の一手は何か

2020年の東京オリンピック開催に伴い、通信業界に対する行政の動きが活発だ。1つは2015年5月から総務省の指導(お上の介入)で導入された、大手キャリアが販売する端末のSIMロック解除義務化。

もう1つが最近話題になっている、高すぎる携帯料金を安くする という議論。「高すぎるから安くしろ」という安倍首相の一言から始まったとされるこの議論は、2015年12月16日にタスクフォースという名の有識者会議で検討してきた報告書案を最終的に総務省が了承。

実質0円や高額キャッシュバックなど主にMNP乗換ユーザー優遇施策を是正する

という方向性が決まった。
この手の議論は、数年前から繰り返されていたし、僕自身も疑問を持ってはいる。ただ、この議論の中心にいる 有識者 とされる人達が余りにもお粗末で、この先に訪れるのは 携帯端末の売上げが著しく低下することによる官製不況だろう

そして、更に未来は何らかの形での復活だ。「0円端末をやめろ」という話はこれが初めてではない(前回は2008年度)。今回の施策によって一時的にはなくなるかもしれないが、頭のいいキャリアは絶対次の一手を考える。お上は携帯キャリアを舐めすぎだ。

僕はSIMロック解除の義務化については「無いよりはいい」という意味で賛成していたが、今回の件はまさに「余計なお世話」になる気がしてならない。

この議論の問題点と、結果としてこれからどうなるかを予想も含めて紹介しようと思う。

通信費の低減を巡る動き

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おさらいも含めて、これまでの経緯を紹介しようと思う。

まず、以下の記事が最初に生まれた議論(2007年頃)の結果として、発生した事実を紹介するもの。

通信と端末を分割せよという指示が出た結果、docomoで言うと「バリュープラン」というものが登場した。だが、結果として端末価格が高額となり(大体5万円くらいになった)、売上げが低迷。この事が、現在主流となる割賦販売と、2年縛りという販売手法を生むこととなった。

そして、以下が2015年12月16日に総務省配下の有識者会議の低減としてまとめられた内容とその解説記事。

この流れは既定路線だったため、docomoは先駆けて他社からの乗換(MNP)でのキャッシュバック廃止を発表した。今回の提言の要旨をざっくりまとめると、以下のようなものだと僕は認識している。

  • 年齢や機種を限定している月5千円以下のコースを参考に、通信量の少ないライトユーザーの負担を下げよ
  • スマホを「実質0円」にするような端末値引きは不公平なので、値引きを適正化せよ
  • 端末値引きを受けない長期利用者の負担を下げるような料金プランを検討せよ
  • MVNO(格安SIM)と格安スマホの利用を活性化せよ
  • 利用者の選択肢を拡大するため、中古の端末市場の発展を望む

見るだけで「いらないお世話だなぁ」と思ってしまう。
通信費を本気で安くしたい人は、MVNOを使うなり、MNPを駆使して既に携帯料金は安くしている。今でもMVNOを使えば、音声通話付きで月3GB程度通信して2,000円。MNO(大手キャリア)でもMNPを駆使すれば、3,000〜4,000円で回線を維持することは可能だ。

通信料金の値下げは1GBなど安価なプランがあればよいか

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今回の件で間違いなく大手キャリアが用意するのが、

  • データ通信量は1GB
  • 月々の維持費は5,000円以下

という料金プランと月額で最大1,000程度の値下げ。これ、果たしてメリットがあるのだろうか。

今回の議論の発端は、家計に占める割合として通信費が非常に高くなっているから安くしろという話。確かに高いのは僕も分かる。だが、高くなる理由を考えずに高いとだけいうのはおかしいと思う。

要因はいくつかあるが、通信の重要性は10年くらい前と比べても桁違いに高まっている。今や電気・ガス・水道の ライフラインと呼ばれるサービスと変わらない レベルだ。そんなサービスなので、家計に占める割合が高まるのは当然だと思う。

それでも料金を下げるための議論として必ず上がるのが、データ通信をほとんど使わないライトユーザー向けの安価なプランが必要 という話。だが、僕はライトユーザーがデータ通信を使わないという前提そのものが、間違っていると思う。

LTE(4G)の普及でモバイルデータ通信は、固定回線(ADSL・光ファイバー)並みの高速化を果たした。その結果、固定は要らない、モバイルだけでOK と考える人はここ数年特に増えた。モバイルサービスに詳しい人は、

  • 固定回線を契約し自宅では通信をオフロードする
  • 複数回線を契約する

などの手段を用いて平準化を図る。だが、ライトユーザーはそんなことはしない。何も考えずに使いまくって、あっという間に通信制限にかかる。そういう人は案外ライトユーザーの方が多いのだ。

例えば、iPhone 6 Plusを使っている僕の母親(70歳オーバー)
高齢者なので一般的には、ネットの知識が薄く、ほとんど電子デバイスを触らない(触れない)とされる世代だが、そんな人でも 月に1~2GB 通信している。
※当月(2015年12月分)は12/16時点の通信量

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恐らく本人にそんな意識はない。何故なら、リッチなメディア(動画とか)を見たらデータ通信量が増えるとかそういう意識がないから、知らず知らずのうちに使ってしまう。

あと、時代の流れとしてコンテンツはどんどんリッチ(大容量)になる。例えば、2000年辺りだとWEBページの画像1枚とっても容量を気にしていた。今やそんな事気にする人はほとんどいないですよね。寧ろ、画像は沢山載せた方がいいとされる。

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同じ端末を長く使い続ける事を優遇し続けてよいか

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まあ、通信量1GBプランなんて、恐らく出てくるだけで、キャリアが積極的に訴求しない ことにより実態はあまり契約する人もおらず、総務省の余計なお世話は簡単に封じられると思う。

  • こちらのプランだとすぐに通信制限になります
  • こちらのプランだと固定回線とのセット割(docomo光など)の割引が受けられません or 減額となります

みたいな営業トークが目に見えている。その上で結果としてユーザが納得(?)して上位プランを選択するのは、問題ない筈だ。

寧ろ、今回の議論で僕が一番大きな問題だと思うのは 同じ端末を長く使う事を前提としていること 。新しい端末を作りまくるのは資源の無駄だとまで言い放つ有識者がいるのだから呆れるが、そういう議論は抜きにしても危険な話だなと思った。

何故かと言えば、日本のモバイル業界は、大体2年くらいで大部分のユーザーが機種変更して新しい端末に切換える事で、進歩してきたと僕は思うからだ。
分かり易い例だと2014年にようやくサポートを終了したWindows XP。XPを延命させ続けた事が、Microsoftさらに言えばPC業界全体の進歩を阻んで、結果としてスマートフォン・タブレットの成長を促した面はあると僕は思っている。

現実問題として今のスマートフォンは3~4年なら壊れない限り平気で使えると思う。ただ、そうやって古い端末を使い続けるユーザーの比率が高くなると、キャリアはもちろんWEBサービスを提供するASP、アプリ開発者など全てが、いつまでも古い端末・OSに縛られることになる。

そちらに注力するあまり新しい端末・OSを活かした機能が使われなくなり、結果として業界が縮小してしまう気がする。また、ある程度の頻度で機種変更するからこそ、メーカーは端末を作り続けることが出来た。同一メーカーでの機種変更需要は比較的読みやすいからだ。

利用期間が長くなることで、一番厳しい状況になるのは 他ならぬ日本メーカー 。少なくとも、日本以外での販路をほぼ持たない、SONYを除く日本のスマホメーカーはこれでほぼ生き残る術を失ったと言える。

そして、この事は有識者会議の提言にある 中古市場 の活発化にも影響を与えると思う。

中古市場が活性化する理由は何だったのか

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今、ヤフオクなどインターネットオークションや、GEOやソフマップなど中古販売店にはスマートフォンが多く並んでいる。

特にインターネットオークションはそうなのだが、ここにある端末として多いのは、開封してアクティベーションしただけの中古品、いわゆる 新古品のスマートフォン だ。本当の意味での中古品の比率は案外低い。

これらの端末がどうやって購入されているのかと言えば、大手キャリアが MNP一括0円とかで投げ売りしたスマホだ 。キャリアのユーザーが負担したお金で購入した端末が、中古市場に並ぶ訳で、甚だ不健全な状態だとは思うが、結果として 状態のいい中古品を比較的安く購入出来る 状況が生まれているのもまた事実。

つまり、今回の施策で投売りされる端末が減ると、中古市場に流通する端末は激減するだろう。さらに言えば、中古市場に流通させることを封じる策をキャリアは既に持っている。下取りプログラム の存在だ。

中古業者と同価格かそれより少し高い買取金額として、機種変更時の原資にさせたら、多くのユーザーはこの制度を使うだろう。キャリアはそうやって集めた端末を国内ではなく、海外で売ればいい。そうなれば、国内の中古市場に流通する端末は、

  • 本当の意味での中古品で状態が悪い端末
  • 古い端末

ばかりが溢れるようになる。車のように一部の機種は古いものが持てはやされる時代が将来は訪れるかもしれないが、現在はほぼ無価値。つまり、キャリアのさじ加減1つで中古市場は今後衰退するんじゃないかと思う。

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料金が高かったのはユーザーが望んだ結果でもある

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日本の携帯料金は高い

そのようによく言われる。携帯キャリアは民間企業だ。ユーザーが望めばそれをやるが、当然コストが掛かるためそれは通信料に含む形でユーザーに請求される。

確かに、安くはないがサービス内容を見ればそこまで高いと言えるのだろうかとも思う面もある。理由は2つある。

全国津々浦々にあるキャリアショップ

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最近増えて来たMVNO(格安SIM)と、今回やり玉に挙がっている大手キャリア(docomo・au・SoftBank)の大きな違い。それは、リアル店舗での対応有無 だと思う。

MVNOは基本的にWEBでの手続きが前提で、サポートも貧弱。だが、大手キャリアはショップに駆け込めば、例えばメールの設定方法やトラブルの解決方法まで、懇切丁寧かつ基本的に無料 で教えてくれる。

キャリアショップの運営やスタッフの雇用は直接キャリアが行っている訳ではないが、キャリアの看板を掲げている以上docomoショップであれば、docomoのスタッフとして対応してくれる。

ここには当然お金が発生している訳で、この原資は利用者が負担する事になる。最近はスマートフォンの普及でショップにおける手続きに時間が掛かるようになった。そのサービスを維持するために、料金が高くなるのはある程度仕方ないことだと思う。

そして何よりも、これを望んだのはユーザー自身。「とりあえずショップに行けば何とかしてくれる」って人が多すぎる事も問題だと思う。

ド田舎や山奥でも使える

僕は海外に行ったことはそれほどないが(最後に行ったのは2010年に新婚旅行で行ったドイツ、フランス)、海外で携帯を使うと圏外になることが非常に多い。地下はもちろん少し田舎に行くと住民がいる地域はともかく、そこを繋ぐ道路沿いは圏外なんてことは珍しく無い。

ところが日本は、一見誰も住んでいないような場所、数世帯しか住んでいないようなド田舎でも携帯が使える事が多い。国土が狭い日本という事情はあるにせよ、これは凄いことで、特に思うのは本格的に普及し始めたはわずか3年前のLTEサービス。

2012年くらいは「3Gに落ちる」という現象は都市部でも珍しく無かった。ところが、あれから わずか3年で僕が今契約しているdocomo・auの回線では、LTEの表示を見ないことの方が少なくなった 。これって凄いことだと思う。

キャリアはそれだけ、設備に金をかけている(=投資している)とも言える。

キャリアは公共の電波を使ってサービスを提供しているのに儲けすぎ

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とはいえ、それだけ多額のお金を使っているにもかかわらず、携帯キャリアは 毎年莫大な利益を上げている。これをおかしいと思うのは当然だ。

何故かと言えば携帯キャリアは、公共の電波という国民の財産を使ってサービスを提供している からだ。そこにはやはり不公平感を感じる。しかし、それを許してきた土壌がかつてはあった。

携帯キャリアは電波を使ったサービスを提供すると同時に、端末とサービスを一体で手がけて 新たなサービス・価値を創造していた からだ。代表格はやはり 携帯インターネットの元祖iモード だろうか。

例えば、莫大な利益を上げているという意味ではAppleやGoogleも同じだ。だが、これらの企業に対して儲けすぎという人は少ない。何故かと言えば、これらの企業は自らがイノベーションを起こして、新たな価値を創造し、そこから利益を得ているから。

しかし、今の携帯キャリアにそれはない。端末はAppleのiPhone・iPadやGoogleのAndroidがほとんど。プラットフォームを奪われた結果、サービスは他社と同じ土俵で勝負することになり、キャリアの存在感は薄まった。

結果、キャリアの土管化 と呼ばれるように、現在はどのキャリアも通信のみを担うようになっており、同質化が進んでいる。それでも以前のように儲けすぎている事に批判が上がるのは当然だ。

終わりに

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今回の決定は基本的に MNPによる乗換ユーザーを極端に優遇する事を是正 することが一番の目的と思われ、もしかしたら多くのユーザーにとってデメリットはそれほどないかもしれない。

今回のガイドライン策定は、2015年度末(2016年3月の新生活商戦)から適用させることを目指していると言われているため、その直前となる2015年12月〜2016年1月くらいまでは、最後のキャッシュバック祭り として大いに盛り上がるだろう。既にその兆しはある。

この事で、2016年4月以降一時的には端末販売が落ちるのは間違いなく、それがいつまで続くのかが今後の焦点。

  • 0円ではないが、1円とか100円みたいな極めて安い金額で復活
  • ポイント還元などで対応

この2つが有力な対策と思っている。特にポイントについてはdocomoがdポイントを開始したりして、各社が利用範囲の拡大に力を入れている。これが、現金キャッシュバックや実質0円の代わりとなる可能性は高いように思う。

今まで様々な政治介入や市場環境の変化を経ても、あの手この手で従来の販売手法を継続し、莫大な利益を生み出してきた携帯キャリアの次の一手には注目しようと思う。

繰り返しになるが、今のモバイル業界は健全とは思わないし、問題はある。だが、そういう悪い部分も含めて、盛り上がって、業界が活性化し、結果として世界一とも言えるモバイル大国になっているという事実は間違いない。

これはある意味国としても誇れる部分だと思うのだが、今回の施策が冷や水にならないことを祈るばかりだ。

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