avex(エイベックス)が投資家・株主に公開した事業戦略から、iDOL Streetリロードとの関係を読み解く

avex

2016年6月25日にTOKYO DOME CITY HALL(TDCホール)にて、「iDOL Street Carnival 2016 6th Anniversary ~RE:Я|LOAD~」が開催されました。

そもそもは2016年1月に「リロード」と呼ばれる新体制の発表が予告され、その宣言通りの発表だったんですが、その中で繰り返されていたのがavex(エイベックス)の事業戦略にもとづくものといえるような発言です。

確かに考えてみればiDOL Streetはエイベックス・グループ・ホールディングス株式会社が行う事業であり、同社は東証一部上場企業。少なくとも株主に対して事業戦略を説明する義務を負い、いわゆる大企業の1つとして高いコンプライアンスを求められる立場でもあります。

リロードの詳細発表後、iDOL Street統括プロデューサー樋口竜雄氏が種明かしみたいな感じで、一部のエピソードをブログ記事として公開していますが、その中に以下のような記載がありました。

アイストカーニバルが行われた前日に行われておりますエイベックス・グループ・ホールディングス定期株主総会、その前の5月11日付けでAGHD、IR情報等ででているエイベックス・グループ「成長戦略2020」として掲げている企業戦略に関連していることをファンの皆様にもご理解いただきたいと思います。

ご興味がありましたら検索してみてください。正式な資料としてWEB上にもあります。

引用元:アイストリロード連載:00「ブログ再開」/01「リロードの意味」|iDOL Street スタッフオフィシャルブログ

なんと一般人でも閲覧可能な資料があったんだ!
というわけで、早速見てみたんですが、それをみるとアイストリロードの意図などが何となくわかってきた気もします。

まあ僕はavexの株主でも、関係者でも無いため、資料をみて感じた感想であり妄想に過ぎないんですが、コラムとしては面白いかと思い記事にしてみたので、よろしければご覧ください。

少々長い記事なので、ページ分割しています。

この記事に記載しているavexグループの事業戦略に対する見解は、当ブログの筆者(チー)の私見です。
内容についてエイベックス・グループ・ホールディングス株式会社およびiDOL Street関係者に対する問合せはご遠慮ください。

エンターテイメント業界を取り巻く状況

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僕の仕事はSE(システムエンジニア)です。
今までもいわゆる音楽・芸能関係などエンターテイメント業界で仕事をしたことはありませんし、関わった事もありません。

ただ、2000年頃からモーニング娘。を中心とした、アイドルを見てきたので、利用者側(=観客)としての知見はそれなりにあります。

というのも、2000年頃から音楽やエンターテイメントを取り巻く環境は大きく変わりましたし、たまたまですがその過程を見てきたからです。この頃からのキーワードは、

  • ネット
  • デジタル対応
  • リアル体験

だと僕は思っています。

2000年頃最も問題になったのは、CDからリッピングされた音楽データ(mp3ファイル)や録画されたプロモーションビデオ(PV)が、ネットにアップされCD販売などに影響を及ぼし始めたと言うことです。

この頃、ネット上で一番もてはやされたコンテンツはモーニング娘。だったと思います。音楽や動画ファイルである事を偽装したり、分割したり(モーニング娘。のヒット曲LOVEマシーンが由来の「ラブマ分割」なんてものもありました)、あの手この手で拡散していました。

法的な解釈はさておき、この頃から既に音楽や映像は無料みたいな文化は出来つつありました。
avexなどのレコード会社はコピーコントロールCD(CCCD)などを発売しましたが、焼け石に水どころか、むしろ不評を買ってCD売上げは更に落ち込みました。

結果、CCCDは中止となり、iTunesストアなど音楽は配信という流れが出来上がっていきます。
また、MVはYouTubeなどで配信されるのが常識となり、まさにプロモーションツールに変って行きました。

携帯インターネットの普及で「隙間時間の取り合い」が始まる

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そして、2005年以降は携帯インターネットを使わない人間の方が減っていき、例えば移動時間はウォークマンで音楽聴くか、本を読むという常識すら変わります。

ネットやゲームがこの分野に参入してきて、隙間時間の取り合いが始まります

この事でエンターテイメントの選択肢が増えましたが、相対的に音楽の価値は下がりました。こうなると、シングルCDが1枚1,000円とか凄く高く感じるんです。だって、ネットは基本無料ですから。

さらに言えば、お小遣いなどの使用対象が携帯代に移り、それ以外のことに使えるお金が減りました。景気的にも不況・デフレと呼ばれる時代です。財布の紐はどんどん固くなります。

結果、

CDやDVDというパッケージメディアだけではもう消費者が満足しない

という状況になりました。
CDにDVDを同梱するような形の販売を始めたのはavexと言われています。この効果もあり日本は海外に比べて比較的CD売上げの減り幅が少ないとは言え、延命に過ぎなかったと思います。

この事は、2016年時点ではエンタメ業界だけでなく、ほとんどの人が認識している現実です。今どき、「音楽が売れないのはネットのせい」なんて言ってる人がいたら、指さして笑われるレベルだと思います。

ですが、この事にいち早く気づいて手を打った業界がいくつかあります。

僕はその1つが間違いなくアイドル業界だと思うんです

  • モーニング娘。などのHello! Project(ハロプロ)系
  • AKB48などのAKBグループ

が2000年代に行ったことは、今振り返ると2010年代以降のエンタメ業界を見越した施策だったと強く感じます。

CD売上げ減をファンクラブと地方公演で補った「ハロプロ」

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2000年頃の話。
当時全盛期(黄金期)だった、モーニング娘。は1万人くらい収容出来る、アリーナクラスの会場(横浜アリーナなど)でコンサートを行っていました。

ただ、2002年辺りからグループの勢いは明らかに落ち始めていました。特にCDセールスがリリースする度に減少するような状況だったんです。コンサートの集客力も落ちていました。

アリーナで行う大規模コンサートはそれはそれで魅力があるんですが、常態化すると飽きますし、物理的な距離が遠いため満足度が下がる傾向にあります。

2002年当時、素人目に見てもこの規模のコンサートはあと何年も出来ないって思ってました。特に地方のアリーナの空席が目立つようになっていたからです。

そこで2003年夏にモーニング娘。は、さくら組・おとめ組という形でグループを分割し、全国各地にある市民会館などでホールコンサートを開催します(余談ですがあややこと松浦亜弥さんは2002年からずっとこのスタイルでした)。

今風に言えば、ダウンサイジングとでも言うべきでしょうか。2004年辺りまでは引き続き大規模コンサートも行いましたが、徐々にホールコンサート中心に切り換えていきます。
ライブ1本辺りの集客数は落ちましたが、その頃から、

  • 日替わりグッズ
  • 会場限定

などグッズのバリエーションを増やして行きます。多分利益はこれでなんとか確保しているんだと思います。
逆にいえばCDセールスはほぼ諦めたんでしょう。

ファンクラブ(FC)を優先する戦略

ハロプロのファンクラブチケットはオリジナルデザイン

ハロプロのファンクラブチケットはオリジナルデザイン

もう1つ重視していたのはファンクラブ(FC)です。
ハロプロのチケット販売はFCが中心です。

  • 2002年頃からファンクラブチケットは、オリジナルデザインにする
  • 一般発売のチケットより若干安価にする

など付加価値を付けて、ファンクラブ会員を増やし、チケット販売をファンクラブ経由を中心とするように切り換えていきました。

1公演辺りの集客を減らしても、全国各地を周り公演数を増やすことで不足分を補うという戦略なんだと思います。

首都圏在住の方には理解できない感覚だと思いますが、あのモーニング娘。が僕・私の街に来てくれるって感覚は結構重要で、当初は何処に行っても満員でした。

それも人気メンバーが卒業し、グループの勢いが落ちる中で、地方でも空席が目立つようになりましたが、それでも地方のホールコンサートを重視しているというのは現在でも続く、ハロプロの魅力であり強みです。

アイドルの方から会いに行って、ステージを体験してもらう

接点を増やすことで、ファンの裾野を広げ、同時に人材発掘をしているのだと思います。

CD売上げ減をCDの付加価値を上げることで補った「AKB48」

AKB48は会いに行けるアイドルをコンセプトに誕生しました。

この為、結成当初から握手会などの接触系イベントを多数行っていました。しかし、メジャーデビューを機に、このコンセプトにも限界が出てきます。イベントを行える、首都圏のファン(ヲタク)しかCDを買いません。

結果、思いのほかセールスが伸びないという状況になって行きます。
そこでやり始めたのが、今やメジャーアイドルがよく行う全国各地で握手会を開催する全国握手会、そしてCDを投票券と化してしまったAKB総選挙です。

いわゆるAKB商法などと言われ、批判も受ける手法ですが、パッケージメディアとしてのCDだけでは売れないが、付加価値を付けることで、CDで売上げ利益を確保する事を目的にした戦略だと僕は思います。

結果、2010年代に入ってミリオンセラーなんて言葉はAKB48のCDでしか聞かない単語になります。

AKBのCDを買う人って何を買っているのかと言えば、音楽も含む「体験」を買っているんです
その体験を魅力的なものに演出することに成功しているから、体験に価値を見出して買ってくれるお客さんが多いわけです。

キーワードは「リアル体験とライブ感」

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ハロプロとAKBの両アイドル運営がやっている事は、かなり違うように見えますが、根底にある思想は同じだと思います。

キーワードは「リアル体験とライブ感」

です。
リアル体験や握手会・イベント・ライブ・コンサートなど生で見ることを意味します。
ライブ感はAKB総選挙のように、自分が当事者になっているような感覚を与える演出を意味します。

今でこそ似たような感じになりましたが(ハロプロは握手会を多発するようになり、AKBグループは地方グループとコンサートが増えた)、この魅力をアピールしやすいのがアイドルだったんです

余談ですが、僕がブログを運営する傍ら、岡山スマホユーザー会というオフ会を主催しそれを継続している理由は、この考えが根底にあります。

ネットが普及したからこその、リアル(顔を合わせてのコミュニケーション)なんですよね。

そして、このキーワードは2010年代以降は、アイドルに限った話ではなくなっていきます。

  • これまでメディアにあまり出なかったようなアーティストが、コンサートを行ったり、首都圏のCDショップでリリースイベント(リリイベ)を行う
  • 海外の有名アーティストすらイベントを開催したりする

音楽だけで生活してきたアーティストは、CDだけではどうにもならなくなった現状をようやく認識し、それはもう変えられないことに気づいたものの、どうしていいか分からずに困っているんだと思います。

そこまで考えると、avexにアイドル専門レーベル「iDOL Street」が登場した理由、事業レベルで考えた目的とかなんとなく見えてくる気がしませんか?

というわけで、前置きが長くなりましたがここからが本題です。

【再掲】次ページ以降に記載しているavexグループの事業戦略に対する見解は、当ブログの筆者(チー)の私見です。
内容についてエイベックス・グループ・ホールディングス株式会社およびiDOL Street関係者に対する問合せはご遠慮ください。
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