Appleが継続的に発信しているメッセージがある。
Designed by Apple in California
このメッセージ自体は、新しいものではないが、2013年〜2019年あたりがとくに強調されていた時期。
2013年から見せ方が変わった理由の1つに、「モノ作りのアメリカ回帰」がある。
この記事では「Designed by Apple in California」というメッセージについて、Appleファンの僕からみた考えを紹介しようと思う。
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。
デジタル自体のモノ作り
21世紀に入り、モノ作りは大きく変った。
デジタルが主流となり、さまざま部品がモジュール化することで、従来巨大な資本と設備がなければできなかった製品が、わりと簡単に作れるようになる。
この影響を受けた国の代表格は日本だと思う。テレビなんて典型じゃなかろうか。
少し雑な説明になるが、アナログ時代は特殊な部品や職人芸的なノウハウがなければ作れなかったが、デジタルテレビは液晶パネルと組み合わせるだけで製造が可能になった。
- 製造プロセスが完成することで、属人性を排除。土地・人件費などが安い新興国で生産可能となる
- 高品質だが高い日本製、品質は低いが安い海外製、という棲み分けができる
- 海外製の品質が向上し、日本製のメリットが消失
- 製造がすべて海外へ移管される
2024年現在も、日本国内においては「Made In Japan」は高品質の証という扱いをされているが、そんなことをいまだに信じているのは日本人だけだろう。
なぜかといえば、「デザイン」という視点が欠落していると思っているから。
デザインの重要性
デザインといえば、製品の見た目の部分と思いがちだが、それだけじゃない。
- 製品が動くソフトウェア
- 製品を使うことによる、ライフスタイルに与えるイメージの明確化
- それらの魅力を顧客に伝える戦略
このようなものをトータルで考えることが現代におけるデザインだと思う。
簡単に言えば、「付加価値」とでもいうだろうか。
こういう部分が一番上手かったのはAppleだ。
iPhonが登場する2000年代後半まで、Apple製品といえば「イイモノだけど、高い」というイメージだった。
今もそのイメージはあるが、iPhoneの登場で「イイモノなのに、安くて便利」というイメージに変わったように思う。
iPhoneもそうだし、MacBook Airなど価格だけみれば10万円といいお値段だが、他者製品と比較して特別高いものではなくなった。
Appleの本社は昔も今もアメリカだが、製品企画・開発の中心はアメリカのままでも、製造を他国(主に中国)へ移管することで、原価を下げてきた。
これはAppleに限った話ではないが、基本的には同じ製品を「世界中」で売るので、大量生産することで価格競争力が高まった感じだと思う。
ただ、最近限界が見えつつあったのも事実だ。
「Designed by Apple in California」は原点回帰?
2013年頃から強く発信されるようになった、「Designed by Apple in California」というメッセージ。
この頃、Apple製品に2つ変化があった。
- アメリカでの生産にこだわった「Mac Pro(Late 2013)」の発表
- iPhoneなどに「Designed by Apple in California」のメッセージを強く表示
とくに驚いたのは後者で、開封体験そのものが変わった。
それまでiPhoneの開封体験は、蓋を開けたらiPhone本体がいきなり登場するものだった。
しかし、2014年発売のiPhone 6以降は「Designed by Apple in California」が最初に登場する。
これは2018年発売の「iPhone XSシリーズ・iPhone XR」まで続いた。
Mac Proがそうであったように、「アメリカでのモノ作り」にこだわるという決意と読みとれた。
この動きは日本でも賞賛されたが、実際のところ順調ではなかったように思う。
Mac Proはその後ほぼアップデートされないまま、2019年にデザインごと刷新。アメリカ生産のアピールも姿を消した。
終わりに
Mac Pro(Late 2013)がうまく行かなかったことは、もう1つの現実を示したと思う。
発展途上国でのモノ作りの技術レベルは高い
いくら効率化が進んでも、現場にいないと分からない微妙な設定変更や最終チェックは「人」の手を介している。
モノ作りをはじめて10年以上経てば、そこにはノウハウがたまっているわけで、先進国でモノ作りをすればよりよいものが作れるわけじゃない。
「日本のモノ作りや原点回帰」に夢をもつのはよいが、この現実は認識しておく必要があるのだろうと思った。