頻発するauのLTE障害。2番手であり続けるKDDIのジレンマ

先日iPhone 5で使用する2.1GHz帯による75Mbps通信の人口カバー率が14%しかないと騒ぎになった、auのLTEエリア問題。その話題がまだ盛り上がっている中、一昨日から首都圏を中心にLTE接続障害が頻発している。しかも、看板だった800MHz帯も含めたLTE通信全般の障害なので根は深い。

エリア問題とセットになってKDDIには大逆風の昨今で、そこを批判するのは簡単なのだが、やりたくてこんな状態になってるわけじゃない。なので、なんでこんな事になっているのかについて、1ユーザーのほとんど妄想に近い推察だが焦点を当ててみようと思う。

というのも、技術的な問題はもちろんだが、KDDI、古くは第二電電と呼ばれていた時代からの企業風土が今の状況を生み出す根本にあるのではないかと思うのだ。

KDDI特有の技術的な問題

CDMA2000とW-CDMA

au(KDDI)が3G回線で使用している技術はCDMA2000という規格。対して、docomoとSoftBankはW-CDMAという規格を採用している。CDMA2000は古くはcdmaOneという技術がベースになっていて、グローバル観点でみればマイナー規格。W-CDMAはdocomoが中心になって開発された規格で、現在では世界のわりと広範囲で採用されている。

W-CDMAとCDMA2000の分かりやすい違いは、auがiPhone 4Sを発売した時にクローズアップされたように、音声通話とデータ通信が同時に実行できるか否かだ(W-CDMAは可、CDMA2000は不可)。音声通話が主で、データ通信が従だった10年程前はそれでも良かったが、今やその立場は完全に逆転。しかし、電話である限り、音声通話は捨てられないので、今ではCDMA2000のデメリットが目立つ形となった。

CDMA2000とFD-LTE

昨年から日本で一気に普及したLTEは3Gの上位規格だが、現在はデータ通信専用の技術。その為、LTE通信中に音声着信があれば3Gに切り替わる。これはW-CDMAでもCDMA2000でも同じだが、この切替が発生した時の処理ってCDMA2000ってちょっと複雑なんじゃないかと思う。仮にこんな流れだとして、

W-CDMA CDMA2000
LTE通信

3G切替

3Gへ
LTE通信

3G切替

【切替原因】
音声着信    LTE圏外
↓           ↓
3G(音声)   3G(データ通信)

技術仕様はよくわからないが、プログラマという立場で見れば余計な判断が発生する分システムは複雑化するし、それによって障害も起こりやすくなる。

仮にこれが当たってれば、auのLTE端末で頻発すると言われる○問題の原因の1つかも知れない(高速通信を必要としない音声通話の場合、まず電波を掴むことを優先すると思うので)。で、このシーンを減らすにはLTEエリアを少しでも広げて、切替原因を音声着信にほぼ一本化すれば流れはスムーズ。auが800MHzでしゃかりきになってLTEエリアを広げているのはそんな事情もあるのかもしれない。

しかし、頑張って広げたものの上記記事のように制御側が追いつかなくなっているのが現状のようだ(上記記事も推察に過ぎないが、大部分は当ってると思う)。

10年近く前「使える第3世代携帯はauだけ」なんて言って、mova(PDC)からFOMA(W-CDMA)への切替に苦しむdocomoを尻目に、CDMA2000に素早く移行して栄華を極めたauは、かつての基幹技術に苦しめられている気がする。この解決策の1つとしてはVoLTEというLTEでも音声通話が出来る技術を導入することだが、これはまだまだ時間が掛かると思われ、この問題は少なくともあと数年auについて回る。

ビジョンの見えないKDDI

<

h3>携帯キャリア毎のビジョン

上記のようなKDDI特有問題が仮にあるにしても、LTEという新技術導入に当って抱える問題は基本的に各キャリア同じだ。docomoは少し前まで障害が頻発していたが最近は落ち着いた、SoftBankはLTEに限って言えばほとんど障害を起こしていない。この違いは結局インフラへの投資額なんだと思う。

で、このインフラへの投資はどの程度のユーザー数・利用状況を想定しているかによって変わる。田舎に都会並みのインフラは必要無いし、その辺りのバランス感覚・取捨選択はキャリアによって違うはずだ。

docomoは落ちたとはいえ国内No.1のユーザーを抱える、業界の巨人。ビジョンと言われたら、まあdocomoなんで、、、(苦笑)、という感じだがそれでもやろうとしていることは明確。大量ユーザーの使用に耐える、ネットワークを構築することだ。現在Xiの契約数は1000万人以上なのに、目立った障害は発生していない。なにもないと当たり前に感じるが、たった1年程でここまでのものを作り上げたと言うのは地味にすごいことだ。そもそも、母体となるユーザー数がau・SoftBankとは違うのだから。

SoftBankは明確、「ドコモに勝つ」。docomoに勝つというのは売上だけでは意味が無い。ユーザー数を逆転するには、それ相応のインフラ設備が必要なのは自明で、こればかりは得意の買収ではどうしようもない(docomo自体を買収しない限りはw)。SoftBank 4G LTEは現在ほぼiPhone 5ユーザー専用のサービスで、多く見積もっても300万人くらいしか使ってないと思うがそれでも、きっちり結果は出している。

じゃあ、auはなんなのかというと、「3M戦略」という言葉はよく聞くが、携帯という部分に特化すると正直良くわからない。

永遠の2番手

auの母体企業であるKDDIは古くは第二電電と呼ばれ、民営化したとはいえほぼ独占・半官半民のNTTに対抗させるために生まれた企業が基になっている。なので、KDDIだって半官半民みたいな企業だが、表には出せない明確なビジョンがあるとすれば、

NTTを超えないこと

なんじゃなかろうか。つまり2番のままでいいと言うことだ。
それは、携帯でも同じで2番手を死守する必要はあるが、NTTドコモに勝とうという気はないという事に繋がる。気持ちとしては勝ちたくても、それを本気で言える人は社内にいないじゃないんじゃなかろうか。まあ、後出しジャンケン的に語れば、auがiPhoneを導入したのは、SoftBankに抜かれて業界3位への転落が目前に迫っていたからというのが一番大きいんじゃないかと思う。

iPhone 5にしてもSoftBankへの対抗意識は露骨だったし、少なくともdocomoを対抗相手として考えていないことは明白に思える。まあ、結果としてSoftBankがテザリングを開放したり、イーアクセス買収でLTEエリアが広がったりと良い意味でサービス向上に繋がった面はあるが。

そういう意識は、インフラ投資にも素直に現れるだろう。簡単にいえば、docomo並のユーザーを支えるインフラにはしないし、docomoよりお金をかけることはないはず。スマートバリューなどの値下げ施策が好評で予想以上にユーザーが増えて、始めたばかりのLTEがなんだか異様に注目を浴びてしまって、ちょっと困ったというのが現在の状況なんじゃないかと思う。

どうするKDDI

昨年末頃の好調と打って変わって大逆風となってしまったが、逆に言えば問題点も見えたしこれからは良くなっていくと考えられる。

この状況ではさすがにユーザー減少の流れは避けられないだろうし、しばらく試練が続くだろうが頑張って持ち直して欲しいなぁと思う。ここまで大逆風で批判の嵐になると、逆にauをもうしばらく使い続けてどう変わって行くか見てみたいって気になってくるんですよね。

しかし、SoftBankの孫正義氏は色んな意味で批判も受けるが、ビジョンを明確にだしてそこに全力で投資するというのは改めてすごいなと思う。iPhone 5とLTEに関する戦略に関しては、iPhone 5発売当初僕自身かなり疑っていたし、そういう考えがあったからauに移ったが、発売から数ヶ月経っての結論として嘘じゃなかったと言わざるを得ないので。今回はトップの覚悟と思いの違いが結果にそのまま現れた感じだ。

SPONSORED LINK