新型コロナウイルス感染拡大によって、経済活動がストップし様々な分野に影響が及んでいます。
僕が住む岡山県倉敷市は、倉敷美観地区など「観光産業」が盛んですが、これもストップ。
「かき入れ時」ともいえるGWが自粛期間になったことで、観光施設・飲食店は深刻な影響を受けています。
ただ、もう1つ大きな影響を受けているのが、「3密」が発生しやすい場所としてピックアップされた「ライブハウス」をメインに活動する、アイドルグループです。
この記事では、当ブログではお馴染みですが、最近僕が設立した「一般社団法人はれとこ」の理事にも就任いただいた、へなぎさんに業界の現状についてお聞きしました。
僕はアイドルに救われてきた人間なので、なんとか頑張って欲しいと思ってます。
この記事が、少しでも多くの方の目に触れ、エンタメ業界の現状を知るきっかけになればと思います。
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「株式会社トイプラ」の現状
とても厳しい状況とは思いますが、最近はどんな感じですか。
へなぎ
おかげさまで「地獄みたいな状態」です(笑)
ただ、「売上」という意味だけでいえば、確かに大幅減ですが、その分「交通費・宿泊費」などの経費は減っています。
なので、利益的には5割ほど落ちた程度で、配信や限定物販でなんとか耐え抜いてる感じですね。
ただ、今の状況が長くなるほど減ると思ってます。「3ヶ月」が限界でしょう。
僕が絶対やりたくないことですけど、現実的には、
固定客から「むしり取る」
みたいな形にどうしてもなっちゃうんですよ。
僕たちも苦しいですが、ファンの皆さんも苦しい方が多いはず。
なので、最初は支援しようってなるけど、自分自身の給料も減るから、それどころじゃなくなりますよね。
なので「無理なく」としかいえないですし、何よりも「固定客だけを相手にする構図」が面白くない。
一番苦しいのは大手とデビュー・生誕・卒業を控えていたグループ
へなぎ
ものすごくヤバいです。
- デビューを控えていたグループ
- 生誕、卒業を予定していたグループ
ここが特にキツいようですね。
うちも生誕は予定していて、とりあえず「延期」と言ってますが、いつできるかなんて正直わからない……。
そういう子はすごくかわいそう。
へなぎ
地下・地底アイドルは、厳しいと思います。
ただ、「大手」も厳しいですよ。固定費が半端ないので。
大手は薄利多売というか、優良なコンテンツを真面目に作ろうとしているので、逆に危なくなっています。
業界的には、夏のフェスができないと厳しいでしょう。既にいくつかのフェスは中止が発表されていますが。
僕らも8月にZepp DiverCity Tokyoでワンマンをやるので、6月には決めないといけません。
ただ、「ソーシャルディスタンス」保ってやろうとしたら、「大きな箱」の意味がほとんどない。
100人規模のイベントが今年は主流になるのかもしれませんね……。
そういう意味で、「アイドル一本」って事務所も苦しいです。
うちは一応「Oh!ng★(オーイング)」とか飲食をやったり、いくつかの事業でマネタイズしているので、多少逃げ道がある。
そこそこ知名度があって、小回りも効くうちみたいな事務所が、「この状況では一番恵まれているかも」とすら思います。
日々減り続けるキャッシュに頭を抱えてますけどね……。
東京と名古屋で「分断」。今までの強みがコロナ禍では弱点に
「煌めき☆アンフォレント」など自社グループはどんな感じでしょうか。
へなぎ
グループもやばいです。
一番致命的なのが、メンバーが集まれないことです。
「煌めき☆アンフォレント」と「綺星★フィオレナード」のメンバーは、東京・名古屋・大阪に住んでいます。
東名阪を行き来し、それぞれで定期的にライブし、他の地域にも足を運ぶ。
うちは「地方」を重視しているので、メンバーはもちろん、スタッフもバラバラ。
それが、「フットワークの軽さ」という強みになっていた面があります。しかし、「ステイホーム」になると、集まれないんですよね……。
スタッフはまだいいですが、メンバーが集まれないのは痛い……。
初めて今までの強みが、「弱み」になっちゃった
と感じています。練習すらできないので。
僕もこういう状況になってから、名古屋へいけておらず、1ヶ月以上会っていないメンバーもいます。
「ハニースパイスRe.」は東京なので、今はむしろよく見る
へなぎ
「ハニスパ」は、メンバー全員東京なので、ネットサイン会とか色々できます。
あと、ハニスパは集まって練習もしているんです。
そして、僕も今はわりと時間があるから、暇つぶしで見に行くし、むしろよく会うくらいですよ(笑)
キラフォレ・スタフィオは全員集まって練習できないから、この期間をどう過ごすかで差はつくんだろうなって思います。
- 一人でもスタジオ借りて、何時間も練習する子
- ライブができないから、SNSや配信を頑張りますって子
- 連絡すらせず、ひたすら家に籠もってゲームしてる子
色々います。
それでも、こんな状況ですし「〜しなさい」とはいえないです。
僕ら運営がこの状況でできることは、落ち込んだ売上げの中でも、できるだけ多くのお金をあげることしかないわけで……。
ライブの中止を決断したのは「メンバーからの訴え」
日々状況が変わる中で難しい判断だったと思いますが、どのような状況だったんでしょうか。
へなぎ
本当に無理になる「直前」までやりましたね。
次々にライブハウスが使えなくなり、会場を変えたり、名古屋をメインにしたり……。
できる限りのことはやりましたが、世の中の状況的に限界でした。
続けるべきかの葛藤はありましたか?
へなぎ
それはもちろんありましたよ。
マスク着用・アルコール消毒などできる限りの対策はしても、リスクがゼロになるわけじゃないですし。
色々言われもしましたが、僕は経営者なので、給料をちゃんと払うためにはやるしかなかった……。
散々報道されてますが、「休業補償」なんてほとんどないんですから。ちなみに、「Oh!ng★(オーイング)」を閉めたのは、名古屋市の休業補償があったからです。
それでも、最後はメンバーの訴えで決断しました。
どの業界でもある話ですが、「経営者」と「現場」で考えがずれてしまったところもあります。
そう言われたらできないですよね……。
僕は行政から「強制」でやめろと言われるまではやろうと思っていましたが、結果として「強制になる直前」でやめました。
リリース数の翌月で請求がエグく、ギリギリまでやったから耐えられた
ただ、実は僕もいく予定だった、2月25日に開催した「O-EAST」のワンマンライブ(煌めき☆アンフォレント 4thワンマンライブ ~太陽系◉ワンダーラスト~)が開催できたのは、まだよかったのでは?
へなぎ
ポジティブに考えれば、リリースイベントとワンマンが「ほぼ予定通り」できたのは、せめてもの救いでした。
「2月最終週」でしたが、3月に入ってガラッと東京の雰囲気がかわったので、1週間後ろにずれてたら、O-EASTはもうできなかったでしょうね……。
もう1つ言えば、ギリギリまでやったから会社が今も続いてます。
2020年3月って、僕らにとっては「リリースイベントの翌月」でした。
2月はワンマンやリリイベをたくさん行っていて、その請求が3月にまとめてくるわけですよ。
何百万円も……
ちょうどライブとかをやめた、3月半ばに。「このタイミングでくる?」って胃が痛くなりました……。
ギリギリ払えるけど、全部払ったら死ぬみたいな(笑)
WEBコンテンツの販売で、「固定客からむしり取る構図」にはしたくない
トイプラのアイドルももちろん活動していますが、これはどのように見ていますか?
へなぎ
まあ今はこれしかできない、としか言いようがないですね……。
もちろん、今後ライブができるようになったとしても、以前のようにはならないでしょうし、新しい取り組みは続けます。
- チェキチャ
- YouTube配信
- グッズの通販
色々やってますが、まあ飽きますよね……。
なにより、僕がそんなに好きじゃない(笑)
こういうコンテンツは、「固定客からむしり取る」みたいな構図になりがちです。
僕はできるだけそれをやりたくないんですよ……。
無観客ライブ配信は「ヲタクのエネルギー」がない
「ハニスパ」は何度か行っていますが、今後は配信に力をいれていくことは考えていますか?
へなぎ
うちが「無観客ライブ」をやらないのは、そもそも「集まれない」というのが直接的な原因です。
ただ、卒業・生誕・周年などの「特別な公演」以外、価値はあまりないと考えています。
「ヲタクのエネルギー」がないライブって、価値を感じないんですよね。
それなら、YouTubeに昔のライブ映像をあげた方が、まだいいんじゃないかと。
「やりませんか」って話はたくさん来ます。
なので、とりあえずやることにはしました。
5/24(日)
『煌めき☆アンフォレント 2ndアジアツアー2020 -新宇宙±ワープドライブ- ON LINE公演!』
【時間】OP13:45 ST14:00 特典会 15:15〜
【料金】¥1,000-
【出演】煌めき☆アンフォレント/綺星★フィオレナード
【ライブ配信チケット(ZAIKO)】https://t.co/Djy0upziAO
5/20(水) 18:00〜発売? pic.twitter.com/1T28V3TpSf— 煌めき☆アンフォレント (@kirafore_info) May 20, 2020
今はライブそのものができないので、やれば反響はあるでしょうし、継続的にやって欲しいって話にはなると思います。
ですけど、月に1回か2週間に1回でしょうね。
遠方からでもみられて、日本だけでなくアジアのお客さんまで見えるのでメリットはある。
ただ、やっぱりお客さんの前でやりたいですね。
やっぱり「ライブ」がやりたい!台湾への移住も考えていた
やっぱり「ライブ」がやりたい?
へなぎ
そりゃあやりたい!
日本がこれからどうなるかは分かりませんが、徐々に「日常」は戻ってくると思います。
しかし、ライブハウスが「普通に」使えるようになるのは、間違いなく一番最後の方でしょう。
キャパ1,000人の箱が「パンパン」です!
なんて当分できないでしょうし、活動方法はどちらにせよ考えないと、続かなくなりますね。
世界で今(2020年5月)、一定のルールはあってもライブができるのは「台湾」だけです。
台湾新ユニット『月宵◇クレシェンテ』
1.5m離した座席で限定人数でのライブ。
世界中で国の指導に基づいて今ライブ出来てるのは台湾だけ。言葉も文化も違う国で、自分が作ったものが生きてるのはやっぱ不思議な感覚。だって、ステージも客席も全員台湾の人だよ。そんな素敵なことある?#ルナクレ pic.twitter.com/mJCjyDpqs6
— へなぎ (@hngjapan) April 20, 2020
うちは台湾でよくライブをしていたし、たまたまですが、このタイミングで台湾のグループ「月宵◇クレシェンテ」も作った。
台湾に入国できるようになったら、メンタルの強いメンバーを何人か連れて、しばらく台湾に移住しようかと本気で考えていました。
ステイホームでゲームばっかりするより、台湾のお客さんを楽しませた方が面白いじゃないですか。
日本へ配信もできますし。
あと、やっぱり「台湾のライブ動画」をみると感動しました。
「あー、ライブだ!やりたいな」って。
まあ、台湾に入国できるようになるより、日本が先に落ち着くに越したことはないです。
そうなるよう、もう少しみんなで頑張るしかないですね(笑)
「落ち着いてからで」という雰囲気で、先の予定が立たない
白紙になった予定も多いでしょうし、仮に元に戻ってもそこから「再始動」するのは大変なのでは?
へなぎ
まあプランは丸つぶれですね(笑)
日本については落ち着いて来てから、よーいドンみたいになっちゃうと思います。
ライブも先読み先読みになるけど、キャンセルできるようなところはもう借りられないでしょうし。
そもそも、怖くてできないですよね。
みんなに提案もできないですよ。
「10月にこんないいイベントあるんだけど」
とかいっても、「今はちょっと……落ち着いてからで」ってなるじゃないですか。
まあ、気持ちはわかるし、仕方ないんですけど……。
へなぎ
正直この状況は、「しんどさ」しかないです。アイドル事業を考えると「ウッ」ってなりますね……。
ただ、エネルギーは余っているわけですから、声をかけてもらったり、できることがあればやりたいです。
毎日が飽きちゃうんですよ。
メールとかLINEが来る頻度も減ってます。ただ……
動きようがない、頑張りようがない
これが今一番困っていることですね。
緊急事態宣言が解除された名古屋では、ライブができないか、今色々動いています。
東京は、まだ厳しそうですが、6月から100人規模のライブならできるようになるのではないか、という願望を持っているくらいです。
終わりに
日本はもちろん、世界中で当たり前のように行われていた「ライブ」。
音楽がCD・DVDなどパッケージメディアで「所有」されていた20世紀と比較し、「消費」されるものに変わった21世紀は、「音楽体験」を得られる場としてライブが重視されました。
アイドル業界では「握手会商法」なんて言われますが、今やアイドルに限らず行われていることで、根底にあるのは「体験に価値がある」という考えです。
- ウィズコロナ
- アフターコロナ
という時代の中で、「ライブ」が従来通りに戻るのか、形を変えていくのかはまだ分かりません。
頑張りようがない
という言葉は重いです。エンターテインメントは存亡の危機にあるといっても、過言ではないでしょう。
- ステージに立つ人
- スタッフとして支える人
そのいずれかが欠けても、かつてのエンターテインメントは戻ってきません。
そして、一度無くなれば戻すにはかなりの月日が必要です。
僕はそう思いました。
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ハロプロヲタク時代の友人「へなぎさん」がプロデュースする、アイドルを様々な角度から応援しています。