iPad Air 2(SIMフリー)を購入して以来、いわゆる「格安SIM」のMVNOサービスを色々使って来ている。
何故僕がこんな事をしているのかと言えば、データ通信の需要がどんどん高まる中で、料金が高額なMNO(docomo・au・SoftBank)ばかり使う事は今後できなくなると思われるからだ。
この為、利用料の節約だけでなく、データ通信のオフロードという意味でもMVNOを利用する必要が出てくる。なので、色々試しておこうという思いが実はある。
MVNO(格安SIM)サービスは数多く存在する。
そこには当たり外れみたいなものが当然あるわけだが、総じて言える事は、
ピークタイムの通信速度は遅く、繋がらなくなる確率が高い
ということだ。
考えてみれば当たり前だ。安いには安い理由がある。
この辺りを考察しようと思う。
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大手キャリア(MNO)とMVNOの通信サービスの関係
MVNOは正式名称では『仮想移動体通信事業者』と呼ばれる。
『仮想』の名の通り、自前で移動通信設備を持たない事業者と言う事になる。簡単に言えば、
- 電波を使用する免許
- 設備(いわゆる携帯のアンテナ)
などを持たず、大手キャリア(MNO)がもつ設備を間借りするイメージでサービスを提供する。
MVNOがMNO(docomo・au・SoftBank)に支払うサービス利用料とも言えるのが、接続料と呼ばれるものだ。
この料金の考え方は、MVNOとMNOの接続方式によって異なっており、ざっくりした分け方は、
- レイヤ2(L2)接続
- レイヤ3(L3)接続
となっており、2017年現在はレイヤ2接続が主流となっている。技術仕様はMVNO大手のIIJの解説記事が非常に詳しく分かりやすい。
レイヤ2とレイヤ3で料金面で差が出るのは、レイヤ2は帯域単位、レイヤ3は回線(ユーザー単位)で接続料が決まるということ。
なのでレイヤ3は料金が自ずと決まってしまうのだが、レイヤ2は1つの帯域に多くのユーザーを
接続させることが可能となっている。
電車をイメージすれば分かり易いと思う。
平日昼間の空いた時間帯に乗るのと、朝夕のラッシュの時間に乗るので料金は変わらない。電車の定員(キャパ)は一応決まっているが、その気になれば詰め込めるからだ。
このキャパを決めるのはMVNOになる。
ただ、基本的な考え方として、MNOを超えるキャパは得られないという制限があるし、さらに言えばユーザー数に応じて最適なキャパにしなければ、事業として成り立たない。
間借りしている以上、MNOを超えるキャパもサービスもできない
これが、MVNOを利用する上で理解しておくことだ。
平日昼休みなどピークタイムの通信速度低下が著しいMVNO(格安SIM)
そう考えた時、MVNOの通信速度が著しく低下したり、繋がらなくなる事が多い理由は理解できるかと思う。
元々それほど多くないキャパにユーザーが集中するからだ。前述の電車の例で言えば、ラッシュの時間に相当する。
モバイルデータ通信が集中する時間帯(ピークタイム)というのは、大体以下の時間帯・場所のことだ。
- 平日の通勤時間帯(朝7〜9時、夜18時〜19時)、昼休み(12時〜13時)
- 節目の時期(新年など)
- ターミナル駅
- コンサート、イベント会場など突発的に人が集中するエリア
1〜3については、言われたら多くの方が納得するじゃないかと思う。
MNO(docomo・au・SoftBank)をずっと使っていた人にとって、多少速度は落ちても「著しく」速度が落ちるという経験少ないかもしれない。
MNOは公共の電波を使ってサービスを構築している関係上、営利企業だがインフラとしてそれなりの社会的責任を担っている。
なので、通信容量はピーク時はもちろん、例えば災害時など緊急時にも利用できるような体制を整えている。
それが結局利用料というコストに跳ね返ってくるわけだが、MVNOはそこまでの責任は持っていない。
なので、ユーザーの利用需要に基づき最適な容量を確保しようとする。なので、ピーク時には分かり易すぎるくらいに落ちる。
以下はIIJmioにおける、2014年4月平日12時過ぎの通信速度(場所はJR倉敷駅周辺)。
この速度だとSNS閲覧くらいなら問題無いが、大きなデータや画像表示はかなり遅い。
使い物にならないとは言わないが、ストレスはかなり感じる。この1週間ほどほぼ毎日測定してみたが、12時〜13時の間で下りが1Mbpsを超えることは無かった。
逆に休日になると、分散するためこの時間帯でも速度低下は少ない。
ちなみに他の時間帯であれば、下りが平均5~10Mbps出るため、必要十分な回線速度は担保されている。
※それでもMNOよりは遅いが
ピークタイムの速度低下の原因は「サラリーマン」
この時間帯の通信が混み合うのは何故か。それはランチに行けば分かると多う。
サラリーマンの昼休みは大体12時~13時と決まっていて、その間スマホでネットやSNSを見たりゲームをしている人が非常に多い。要するに利用が集中するから速度が落ちるのだ。
それでも、これほど低下するというのは正直かなり厳しい。上記で言えば1〜3はある程度予測可能なものなのだ。
MVNO最大手であり、通信品質の高さを売りにしているIIJmioですらこうなったという事実は大きい(僕はもうちょっとマシである事を期待していた)。
これはもはやMVNOを使う上での心構えとしておく必要があると感じた。
そして、4については予測は可能でも、突発的なのでMVNO事業者として投資価値は薄く、通信速度が相当低下するのが目に見えている。
MNO通信費が高いことにも、MVNOが安いことにも理由がある
この事から言える事。
やはり通信費が高いことにも、安いことにもそれなりに理由があると言うことだ。
例えば2012年頃に本格的にサービスインしたLTEという通信技術にしても、それからわずか2年くらいでエリアに不満を感じたり、速度低下に悩む事はほとんど無くなった。
かつて通信が混雑すると言えば、お正月の「あけおめメール」だったが、最近は年明けですら、わりと普通に使える。
やはりキャリアはそれだけ通信設備に投資をしているということなんだと思う。しかし、その分料金も高い。
逆にMVNOは、MNOである大手キャリアの3分の1程度の価格でサービスを提供している。
まだまだ競争も激しく、どんどん安くなっており、コストパフォーマンスは抜群だ。だが、安いには安い理由がある。
繰り返しになるが、MVNOはMNO(docomo・au・SoftBank)の回線の一部を間借りしているに過ぎない。
つまり、回線はdocomoでもdocomoユーザーと同じように使えるわけではなく、間借りした狭いスペースにユーザーを沢山収容するため、速度はどうしても遅くなるし、繋がりにくくなる。
深夜・早朝など空いている時間は快適だが、ユーザーが増える時間帯になると一気に速度が低下するのは、それだけのユーザーを余裕を持って捌けるほどの設備を有していないからに他ならない(やれば出来るだろうが、割に合わなくなってしまう)。
コスト面だけみたらMVNOの圧勝だが、あの価格でMNOと同じ品質を求める事自体が筋違いだと言う事は、肝に銘じておく必要がある。そして、この事は別の問題も引き起こす可能性がある。
それは、緊急時にどの程度使えるのかという問題だ。
災害など緊急時にMVNOは本当に使えるのかという疑問
2011年に発生した東日本大震災。
当時はまだ今ほどスマートフォンは普及していなかった。連絡手段の主流は電話かキャリアメール。LINEもまだ無い。
あの時、まず使えなくなったのは電話とメールだと言う。ただ、データ通信自体は生きていて、Twitterとかは普通に使えたというのは、わりと有名な話。
要するにあんな事態が発生して、利用者が急増し、電話やメールは死んでも、キャリアのデータ通信自体は「一応」生きていた。
今は当時よりも遙かにデータ通信が増えているが、逆に連絡手段はLINEを筆頭に、かなり多様化した。不謹慎だが、もし今、同じ事が発生したら、電話・メールよりもデータ通信の方が厳しいかもしれない。
そんな状況で、MVNOが使えるかって、使えるわけないですよね、、、
MNNOの回線では捌ききれないだろうし、そもそもMNOの回線を借りてるだけだから、本家に緊急事態が発生した場合、やはり本家を優先することになると思われる(緊急時の回線利用に関して、MNOとMVNOの契約はどのようになっているのかが逆に気になるが)。
MVNOを使う上では、そういったリスクも理解しておく必要があるように思う。
終わりに
今まで使って来たぷらら、BIGLOBE、IIJはいずれもピークタイムの速度は厳しいものだった。
ただ、それでもIIJmioは高品質を歌っているだけあって、使えないまで悪化はしない辺りは流石だと思う。
- サポート情報の充実
- 通信量の翌月繰り越し
- 高速通信を有効にしている際の直近3日間の通信制限無し
- アプリ(みおぽん)の使い勝手が良い
など、総合力ではNo.1だし、間違いなくおすすめできるMVNOだとは思うが、MVNO事業の性質そのものは変わらないので、そこは理解しておく必要があるように思う。
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