2017年9月に発売された「Apple Watch Series 3」以来、Cellular版ならiPhoneなしでもモバイルデータ通信が可能となった。
この仕組みを実現したのは「eSIM」という規格に対応したためなのだが、Apple Watchの対応後、日本ではイマイチサービスが広がっていない。
2018年9月に発売した「iPhone XS」はデュアルSIMに対応し、2枚目のSIMとして「eSIM」が採用されたが、それでも状況は変わらない。
そんな状況が長く続いていたが、「本命に近いeSIM」サービスが2019年7月になってようやく始まった。
格安SIM大手の「IIJmio」が開始した「データ通信専用SIM eSIMプラン」というサービスだ。と思う方も多いだろうし、僕もちゃんと理解できていなかったので、ようやく脚光を浴び始めた「eSIM(イーシム)」という技術について、僕なりに調べてみたので紹介しようと思う。
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「eSIM(イーシム)」ってなに?
「eSIM」とは、携帯通信事業者の業界団体「GSM Association(GSMA)」が仕様を策定した、SIMカードをソフトウェア化し、端末画面上で複数のキャリアを選択できる規格。
「e」は「embedded(エンベデッド):組み込み」を意味しており、雑に訳せば「組み込みSIM」という意味。
つまり簡単にいえば、
物理的なSIMカードなしで、モバイルデータ通信できるようになるサービス
という感じだろうか。
元々「eSIM」というのは、車両や建設機械などの基盤にSIMの機能を備え付けた、いわゆるM2M機器への組込SIMカードという意味合いが強かった。
スピードよりも安定性が重視されるので、LTEカテゴリー1(LTE Cat.1)を利用するものが多かったそうだ。
- 規格としては古いもので固められている(こなれているため価格も安い)
- 通信速度が上り最大5Mbps、下り10Mbps
- 低消費電力
このような特徴を持っており、スマートフォンで主流の高速データ通信とは一線を画している。
しかし、2019年現在は「物理的なSIMカード」をソフトウェア化して、置き換えるという意味合いの方が一般的には強くなっている。
RSP(リモートSIMプロビジョニング)に対応したSIMサービス
SIMカードがソフトウェア化するメリットは、「書き換え可能になる」ということだ。
例えば、携帯キャリアを変更したとき、通常はSIMカードを交換することになる。
- ドコモなら「ドコモのSIM」
- SoftBankなら「SoftBankのSIM」
という感じで、物理的に分かれているためだが、書き換え可能になると、SIMカードの交換が不要になる。
このような仕組みを「RSP(リモートSIMプロビジョニング)」という。
このRSPもさらに2パターンあり、「M2Mモデル」と「コンシューマーモデル」があるのだが、この記事では「コンシューマーモデル」を対象に解説する。
「eSIM」が普及すれば、海外渡航時の「SIMカード購入」が簡単になる
「コンシューマーモデル」における、「eSIM」の用途として一番分かりやすいのは、海外渡航時に「現地SIM」を契約するケースではないかと思う。
2019年現在、海外渡航時に通信サービスを利用する場合、主に以下の3パターンある。
- 日本からあらかじめ「Wi-Fiルーター」をレンタルしていく
- ドコモなど大手キャリアが提供する、「国際ローミングサービス」を利用する
- 現地でSIMを購入して契約する
1番と2番は、海外旅行など「短期利用」で多いケースだ。
3番は契約手段によって、短期利用・長期利用色々あるのだが、現地でSIMを購入するという「手間」がかかる。
この点、「eSIM」の場合は海外に到着して、iPhoneなどスマホ画面上から、利用可能な通信キャリアを選択し契約すれば、SIMカードを入れ替えることなく、現地キャリアで通信が可能となる。
「eSIM」と「Apple SIM」は何が違うのか?
このような説明をすると、Apple製品に詳しい方は、iPad Proが対応していた「Apple SIM」を想像する方がいるかもしれない。
「eSIM」と「Apple SIM」は、基本的には同じ仕組みと思えばよい。
しかし、「Apple SIM」はiPad Proの画面上から、通信契約して即時利用できる仕組みだったが、Appleと提携した携帯キャリアしか選択できなかった。
日本においては「KDDI(au)」が提携キャリアだったのだが、「eSIM」はGSMAが作成した国際標準規格なので、Appleとの提携に依存せずサービスが提供できる。
日本ではApple Watchや格安SIMとの組み合わせが中心
しかし、日本ではこの「eSIM」というサービスあまり知られていない。
「eSIM」が脚光を浴びたのは、2017年9月に発売された「Apple Watch Series 3」が対応した時だ。
従来iPhoneとセットでしか通信できなかったApple Watchが、単体で通信できるようになる技術として「eSIM」が採用された。
ただ、このサービスはドコモなど大手キャリアでのみ提供されており、大手キャリアでiPhoneを利用している場合の、「サブ回線」という位置付けのものだ。
- Apple WatchのCellular版
- ドコモが販売する「ワンナンバーフォン ON 01」
など対応機種が限定されており、料金をみても「オプションサービス」という感じになっている。
キャリア | サービス名 | 月額利用料(税込) | 登録手数料(税込) |
---|---|---|---|
docomo | ワンナンバーサービス | 550円 | 550円 |
au | ナンバーシェア | 385円 | 0円 |
SoftBank | Apple Watchモバイル通信サービス | 385円 | 0円 |
このため安価と言えば安価だが、本来の「eSIM」とはちょっと違うと思う。
そんな状況が長く続いていたが、「本命に近いeSIM」サービスが2019年7月になってようやく始まった。
格安SIM大手の「IIJmio」が開始した「データ通信専用SIM eSIMプラン」というサービスだ。iPhoneと格安SIMの「データ通信専用eSIM」の登場
IIJmioの「データ通信専用SIM eSIMプラン」は僕自身実際に契約して使ってみた。
iPhoneを操作することでセットアップが完了するまでは行かないが、「アクティベーションコード」と呼ばれるQRコードを、他デバイスの画面に表示しiPhoneで読み込めばあっさりセットアップが完了した。
iPhoneのデュアルSIM対応
モデル名 | モデル番号 | デュアルSIM対応 | 備考 | ||
---|---|---|---|---|---|
nano-SIM eSIM |
nano-SIM nano-SIM |
eSIM eSIM |
|||
iPhone 6s | - | × | × | × | |
iPhone 7 | - | × | × | × | |
iPhone 8 | - | × | × | × | |
iPhone X | - | × | × | × | |
iPhone XS | 全モデル | ○ | × | × | |
iPhone XS Max | A2104 | × | ○ | × | 中国大陸(香港版) |
上記以外 | ○ | × | × | 日本版を含む | |
iPhone XR | A2108 | × | ○ | × | 中国大陸(香港版) |
上記以外 | ○ | × | × | 日本版を含む | |
iPhone 11 | A2223 | × | ○ | × | 中国本土・香港版 |
上記以外 | ○ | × | × | 日本版を含む | |
iPhone 11 Pro iPhone 11 Pro Max |
A2217 A2220 |
× | ○ | × | 中国本土・香港版 |
上記以外 | ○ | × | × | 日本版を含む | |
iPhone SE(第2世代) | A2298 | × | × | × | 中国本土版 |
全モデル | ○ | × | × | 日本版を含む | |
iPhone 12 Pro iPhone 12 Pro Max |
A2408 A2412 |
× | ○ | × | 中国本土・香港版 |
上記以外 | ○ | × | × | 日本版を含む | |
iPhone 12 | A2404 | × | ○ | × | 中国本土・香港版 |
上記以外 | ○ | × | × | 日本版を含む | |
iPhone 12 mini | 全モデル | ○ | × | × | |
iPhone 13 Pro iPhone 13 Pro Max |
A2639 A2644 |
× | ○ | ○ | 中国本土・香港版 |
上記以外 | ○ | × | ○ | 日本版を含む | |
iPhone 13 | A2634 | × | ○ | ○ | 中国本土・香港版 |
上記以外 | ○ | × | ○ | 日本版を含む | |
iPhone 13 mini | 全モデル | ○ | × | ○ |
一般的な「デュアルSIM対応」とは、スマホ内にSIMカードを2枚挿入できる状態を意味する。
しかし、iPhoneにおけるデュアルSIM対応は、
「nano-SIM(SIMカード)」と「eSIM」の組み合わせ
が中心となっている。
この中で特殊なのは、通称「香港版」と呼ばれる、モデル番号「A2104」のiPhone XS Maxとモデル番号「A2108」のiPhone XRだ。
両モデルは、nano-SIMカード2枚による、デュアルSIMに対応している。
SIMカードを2枚挿せば手軽にデュアルSIMが実現できるので、技的認証(技的)問題はさておき、海外で購入して日本国内で利用する人も多い。
iPadのデュアルSIM対応(Wi-Fi + Cellular版のみ)
モデル名 | モデル番号 | デュアルSIM対応 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
nano-SIM eSIM |
nano-SIM nano-SIM |
|||
iPad(iPad 2および第6世代まで) | - | × | × | |
iPad(第7世代以降) | - | ○ | × | |
iPad mini 4まで | - | × | × | |
iPad mini(第5世代以降) | - | ○ | × | |
iPad Air 2まで | - | × | × | |
iPad Air(第3世代以降) | - | ○ | × | |
iPad Pro(第2世代まで) | - | × | × | Apple SIMには対応 |
iPad Pro(第3世代以降) | - | ○ | × |
iPadのデュアルSIM対応は「Wi-Fi + Cellular版」のみとなる(=Wi-Fi版は対象外)。
そして、iPadに関しては、2015年11月に発売したiPad Proで「Apple SIM」に対応していた。
だが、2018年10月に発売した「第3世代iPad Pro」以降のモデルでは、「Apple SIM」ではなく「eSIM」への対応に切り替わっている。
終わりに
日本においてはまだまだ普及しているとはいえない「eSIM」だが、iPhoneなどグローバルモデルを中心に、今後対応端末が増えることが期待される。
ただ、懸念されるのは、
大手キャリアはあまりやる気がない
ということだろうか。
「eSIM」はDSDS(デュアルSIMデュアルスタンバイ)で使われることが多く、データ通信のみ他キャリアに逃げられてはたまらない、という本音が見え隠れしている。
しかし、ビジネスシーンでみれば、プライベートと仕事用の電話番号が1台のスマホで使い分けられるなど、メリットも多い。
「eSIM」が普及することを僕は願っている。
iPhoneで夢の「DSDS(デュアルSIMデュアルスタンバイ)」環境を作ろう
2018年9月以降に発売した、iPhone・iPadは「eSIM」に対応し、DSDS(デュアルSIMデュアルスタンバイ)ができます。
- 対応モデルでしか使えない
- SIMロック解除が必須
iPhoneの対応モデルとおすすめ
とりあえずeSIMを体験するなら、iPhone SE(第2世代)かiPhone 11がおすすめです。