2019年3月5日に総務省が、「携帯電話料金の引き下げに向けた電気通信事業法の改正案」を閣議決定した。
回線契約とセットにした端末値引きを禁止し、端末代金と月々の通信料を切り離した通称「分離プラン」を義務化するのが柱だ。
2019年10月以降、全キャリアで導入を義務化
僕はこの話に以前から疑問を持っている。
本当に安くなるのなら、政府が指導しなくても、携帯キャリア各社は民間企業なので、競争の中でそのようなプランが生まれていると思う。
では、何故導入しないのか。
市場、つまり一般ユーザーが回線と端末がセットのプランを望んでいるから
だと僕は思う。
政府(総務省)の指導で通信キャリアの対応が変わったことが、過去にもある。
2015年5月から本格導入されたこの制度は、当時普及し始めていた「格安SIM」の普及促進と、そこから通信費の値下げを狙って導入された。
そもそも携帯キャリアがSIMロックをかけたことが原因だが、結果としてこの政策はモバイル業界の活性化と料金値下げには繋がらなかった。
- 格安SIM
- SIMロック
- SIMロック解除
- SIMフリー
このあたりをちゃんと理解できる人なんて少なく、分かりづらさしか残らなかったからだ。
だが、その経緯を理解することにも意味はあると思うので、この記事では「分離プランと格安SIM・SIMフリー」について考察しようと思う。
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分離プランはいつから始まるのか?2019年10月から改正電気通信事業法の施行と共に実施済
通信と端末を切り離した「分離プラン」の導入は、政策として決まっているため、各社遅かれ早かれ対応することになる。
具体的には、2019年10月から改正電気通信事業法の施行と共に実施された。
対応方針はキャリアによって別れており、ざっくりだと以下のような方針のようだ。
キャリア | 対応方針 |
---|---|
ドコモ | 通信プラン、端末販売全てを変更し2019年6月から導入 |
au | 通信プラン、端末販売全てを変更し2019年10月から導入 |
SoftBank | 〃 |
UQ mobile | 〃 |
Y!mobile | 「スマホベーシックプラン」を導入 |
その他の格安SIM | 2019年10月から新プラン導入 |
通信と端末の分離は元々「大手キャリア」を対象にした議論だったが、現実問題として格安SIMも通信と端末をセット販売しており、対応有無が注目ポイントといえる。
この中で、最も大きな変化があるのは最大手の「ドコモ」で、プランも端末販売もごっそり変わる。
正直「民間企業に口出しすぎ」と思っているが、最大手のドコモらしい誠実な対応と思うし、4割値下げは言い過ぎにしても、メリットはあると思うので僕は応援している。
SIMロック解除と格安SIM議論のように、利用者の混乱だけ招かなければよいのだが……。
「2年縛り」の解約金が1,000円か無料になった
分離プランは、次期は様々だが2019年に入り各社が導入を進めて、2019年10月に全キャリア・格安SIM業者が導入した。
しかし、後出しで要望を出す総務省は、分離プランに加えてもう1つ物言いをした。
2年縛りの解約金を「1,000円程度」とすること
「2年縛り」と呼ばれた1万円程度の通信契約の違約金は、通信キャリアの乗り換えを阻害するものと見られてきた。
総務省の意向としては、それを限りなくゼロにすることで、競争が活発化すると考えているらしい……。
僕はこれが乗り換えが進まない理由の大半だと思っているが、総務省の意向を受けて、2019年10月以降の料金プランは、違約金が1,000円か無料となった。
各社の対応を簡単にまとめると以下のようになる。
キャリア | 対応方針 |
---|---|
ドコモ | 2年定期契約プランは違約金「1,000円」 定期契約なしプランは値下げの上で、「dカード」で決済すれば値引きで定期契約プランと同額にする |
au | 2年定期契約プランは違約金「1,000円」 |
SoftBank | なし |
UQ mobile | 〃 |
Y!mobile | 〃 |
その他の格安SIM | 〃 |
大多数のキャリアが違約金を廃止
という対応をとった。
ただ通信料金は変わっていない。2年契約を前提にした料金だったはずなのに、縛りがなくても同じ料金になる秘密……。
- 家族割(複数回線割引)
- 固定回線とのセット割
- 決済手段を自社クレジットカードにする
別の方法で間接的に縛っているので、契約解除料を無料化することによる流出は少ないという判断なのだろう。
そして、実際その判断は正しいと僕も思うので、総務省より通信キャリアの方が1枚も2枚も上手だと思った。
以降は、分離プランの話の前に、盛り上がったSIMロック解除と格安SIM議論のことを解説しつつ、分離プランに対する不安や考察を紹介しようと思う。
格安SIMとSIMフリーはセットで考えてはいけません
格安SIMを使うには、SIMフリースマホが必要
そのように思っている人は案外多い。
だが、格安SIMの利用にSIMフリースマホは必須ではない、
『SIMフリー』の対義語となる『SIMロック』というのは、そもそも、自社回線のみ接続出来るように、端末利用を制限する仕組みだ。
例えば、以下のようなパターンは、SIMロック解除不要。
- ドコモのSIMロックスマホを、ドコモ系格安SIMの「楽天モバイル」で利用する
- SoftBankのSIMロックスマホを、SoftBank系格安SIMの「b-mobile S」で利用する
逆にこちらはNGとなる。
- ドコモのSIMロックスマホを、SoftBank系格安SIMの「b-mobile S」で利用する
- SoftBankのSIMロックスマホを、ドコモ系格安SIMの「楽天モバイル」で利用する
ドコモのスマホは、SIMロック解除なしにau回線では使えない。
格安SIMも通信回線の提供元は大手キャリアとなるため、この縛りは同じだ。
利用中のスマホと、キャリア別の利用有無をまとめると以下のようになる。
利用中のスマホ | docomo | au | SoftBank |
---|---|---|---|
SIMフリー | ○ | ○ | ○ |
docomo SIMロック | ○ | × | × |
au SIMロック | × | ○ | × |
SoftBank SIMロック | × | × | ○ |
SIMロック解除すると「SIMフリー」になる
このような、通信キャリアをまたがると、通信出来ない仕組みを「SIMロック」という。
なので、SIMロックありのスマホ・タブレットは「SIMロック解除」を行うことで、「SIMフリー」となり全てのキャリアで通信が可能となる。
SIMロック解除は、2024年時点では全てのキャリアが対応しており、WEBから手続きすれば無料となっている。
やっておいて損はないと思うのだが、制度の認知度も低いし、使っている人もあまりいない。
- 手続き方法は各社バラバラ
- キャリアも積極的に案内していない
ことも影響していると思うが、いちいち手続きが必要でややこしいというのが、ユーザーの本音だと思う。
また、
- 最初からSIMフリーの端末
- SIMロック解除したSIMフリーの端末
は違うモノと誤解している方も多い。
SIMフリーになれば全て同じなのだが、この違いを理解できる人も現実問題としては少ない。
スマホ・キャリア毎の通信方式の違いは難しすぎて「一般人には理解不能」
じゃあ、SIMフリーになればどのキャリアでも繋がるのかと言えば、理論上はそうなのだが、そう簡単にも行かない面がある。
1つはau回線の存在だ。
利用シーンは減っており、auとしても近年中に収束の方向になっているが、例えばドコモのスマホをSIMロック解除して、au回線に接続しても「3G」は利用できない。
これは、ドコモとSoftBankは「W-CDMA」だが、auは「CDMA2000」を採用していることに起因する。
さらに、auは音声通話に関してスマホがVoLTEに対応しているか否かでも、SIMロック解除有無による対応が異なる。
通信キャリア | 利用可否 ※SIMフリー |
利用可否 ※SIMロック |
備考 |
---|---|---|---|
docomo docomo系格安SIM SoftBank SoftBank系格安SIM |
○ | × | 3G通信不可 |
au au系格安SIM |
○ | ○ |
通信キャリア | 利用可否 ※SIMフリー |
利用可否 ※SIMロック |
備考 |
---|---|---|---|
docomo docomo系格安SIM SoftBank SoftBank系格安SIM |
○ | × | 3G通信不可 |
au | ○ | ○ | |
au系格安SIM | ○ | × |
同じau端末でも、VoLTEの対応有無で「UQ mobile」などau系格安SIMでの挙動が異なる謎……。
こんな細かい話を理解できる人は、ほとんどいない。
これが、SIMロック解除とSIMフリー化を促進した結果だと思う。
この状況を分かりやすく表しているのが、格安SIM各社の販売方法だ。
ユーザーが望む、回線と端末のセットプランの方が「売れる」
SIMロック解除を開始した2015年当時、格安SIMといえばドコモ系の通信サービスのみを提供する業者がほとんどだった。
SIMロック解除された、スマホを持ち込むユーザーが多いことを想定していたそうなのだが、2024年現在は、
- 通信サービスは、docomo・au・SoftBankに対応したマルチキャリア化
- 通信サービスとスマホをセットで販売する
というモデルに変わってきている。
僕はこのような「ガジェット系ブログ」を運営していることもあり、通信キャリアや格安SIMの関係者の話を聞くことも多い。
訴求して欲しい商品・売れ筋などを教えてもらうのだが、彼らが口を揃えて言うのが、
通信サービス単体より、端末セットの方が圧倒的に売れる
ということ。
最初は僕も「それは会社として売りたいだけでしょう」と思っていたのだが、アフィリエイトで成約する数を見れば明らかで、端末セットの方が圧倒的に売れる。
これは、回線と端末がセットで割引などもあることからお得感があることもあるが、回線と端末の相性保証をしてくれる「わかりやすさ」も大きいと僕は思っている。
スマホは長寿命化したとは言え、ほとんどの人は3年に1度は買い替える。
通信キャリアを変更しない場合はともかく、変更する場合結局スマホごと買い替えた方が手っ取り早いと感じのだろう。
これが、SIMロック解除とSIMフリー論争の結論だと言える。
「分離プラン」でスマホの通信料は安くなるのか?
では、「回線と端末のセットプラン」が禁止された後、ドコモもでは2019年5月22日から導入される「分離プラン」で通信料は安くなるのか?
ドコモは「3割〜4割」の値下げを見込んでいると語っているが、安くなることは間違いない。
ただし、文字通り「分離」されたので、スマホのセット割引はもうない。
- 割賦購入
- 2年の利用でスマホが0円
みたいな感じで、一定期間の通信契約を約束することで、端末を値引きする仕組みはなくなる。
ドコモは分離プラン導入で「月々サポート」や「docomo with」を廃止
回線と端末がセットになったサービスは、キャリアによって名称は異なるが、以下のようなサービスだ。
キャリア | サービス名 |
---|---|
docomo | 月々サポート |
au | 毎月割 |
SoftBank | マンスリー割 |
Y!mobile | 月額割引 |
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また、ドコモに関して言えば、対象端末の購入で毎月1,500円引きが永年続く「docomo with」も含まれる。
「docomo with」は対象端末の購入が条件となるわけだが、これは回線と端末がセットであることを意味してしまうからだ。
実際、ドコモは2019年5月31日で以下の新規受付を停止した。
分離プランで優れたプランが廃止されることには疑問
僕は、ドコモユーザーだが「docomo with」はいいプランだと思っている。
このプランの良い所は、割引が注目されがちだが「割引が永年続く」という仕組みにある。
- 特にこだわりがないので、壊れるまで使いたい
- 機種変更やデータ移行などの作業が分からない、面倒くさい
スマホは長寿命化したことで、こんな人が増えてきている。
そのような人にとって、同じスマホを長く使い続けても安いというのはメリットが大きかった。
そして、僕のようなガジェットや通信サービスに詳しい人間にとっては、
- 中古スマホ
- 他社のスマホ
を利用しても特に縛りがなく(=docomo with端末を使いつづける必要がない)、高品質なドコモ回線が利用できるというメリットが大きかった。
「docomo with」はサービス開始後、我が家でもすぐに導入し、通信費の削減に役立っている。
総務省が「分離プラン」の導入を強く勧める理由は、通信費の削減と競争の活発化だ。
一体何を目指しているのだろう、と僕は思う。
「シンプルで分かりやすい料金プラン」とはどんなモノなのか?
「分離プラン」導入を進める理由の1つに、「シンプルで分かりやすい料金プラン」を実現を目指すことがある。
10年以上「シンプルで分かりやすい料金プラン」を各社考え、時には総務省の指導を受けながら、実現したかと言えばそうでもない。
確かに、通信キャリアの料金プランは分かりづらいと思う。
今やスマートフォンと通信サービスは、電気・ガス・水道などと同等のライフラインだ。
僕が住む岡山県倉敷市は、「平成30年7月豪雨」で被災した。
この時、重要だったのは通信サービスだ。
スマホなどをどこまで使えるかは人によるが、分かる人は自分達で情報発信&検索し行動する。
災害支援の基本は「自助→共助→公助」の順番で自分で出来る人が増えれば、障害者などより優先度の高い人達の支援に注力できる。
- とにかく安いのがいい
- 安定した通信サービスが重要
- 大容量通信を行いたい
- 最新スマホを常に使いたい
これらの要望をまとめた「シンプルで分かりやすい料金プラン」なんて、結局「絵に描いた餅」になるのではないかと思う。
理解度や使い方がバラバラなのだから、理想とするプランも人によって全く異なるのは当然だ。
ハイエンドモデルが売れない「iPhone終わりの始まり」
分離プランが導入されると、もう一つの問題が発生すると予想される。
ハイエンドモデルのスマホが売れない
今まで、回線と端末がセットになることで、「実質価格」の影に隠されていたが、最新モデルのハイエンドスマホは10万円オーバーも珍しく無い。
そのように考える人は多いだろうし、特に学生など若い人はスマホ購入のハードルが上がるだろう。
その結果、スマホの売れ行きは以下になると思われる。
- 型落ちとなった、旧モデルのiPhone
- 5万円程度のミドルレンジのスマートフォン
日本で新しい通信サービスやスマホがいち早く普及していたのは、最新モデルの普及率が高く、それに合わせた通信サービスを提供していたからだ。
これが旧モデル中心になると、5Gなど新しい通信サービスの普及が遅れることが懸念される。
その懸念に対する、ドコモの答えは「スマホおかえしプログラム」だろう。
このプログラムの、ポイントは以下。
- 「スマホおかえしプログラム」の端末購入に、「ギガホ・ギガライト」の契約は不要
- 旧プランのままでも、「スマホおかえしプログラム」での端末購入は可能
- docomo with回線でも旧プランを維持すれば、「スマホおかえしプログラム」での端末購入は可能(毎月1,500円引きも継続)
さらに言えば、ドコモを解約しても分割払いが継続するので、解約時に一括請求されることもない。
そう考えているユーザーに対して、上手くアプローチできるので、僕はこの販売方式が成功して欲しいと思っている。
終わりに
結局のところ、僕が言いたいのはただ一つ。
ということだ。
「分離プラン」には確かに意味があると思う。
ただ、回線と端末のセットプランを「禁止」するのはやり過ぎだと思う。
- 分離プラン
- 回線と端末のセットプラン
両方用意した上で、あとは利用者が選べばよい。
選択肢が増えることで、悩む・分かりづらい面はあるだろうが、選択肢が何もないよりはよいと思う。
とはいえ、政策的に決まったものはそう簡単に変えられない。
「分離プラン」の導入で、通信費が本当に安くなり、同時に最新スマホの売上げも落ちないことを祈りたい。
ドコモでスマホを買うならオンラインショップがおすすめ
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ドコモ最新キャンペーンページで詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください!
注目の料金プラン「ahamo」・「5Gギガホプレミア」
2021年3月以降、料金プランが大きく変わります。ほとんどの方はプラン変更する価値があるので理解しておきましょう。
「ahamo」が目立っていますが、1,000円値下げされて、テザリング込みで「データ通信無制限」の「5Gギガホプレミア」はヘビーユーザー要チェックプランです
元携帯ショップ店員の僕も驚くようなプランで、各社同種のプランを出しましたが、以下の記事で詳しく解説しています
- ドコモ料金をdカード払いで2年縛りの違約金1000円が0円に
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20年以上ドコモを契約している管理人が、これまで書いて来たサービスの解説・お得な使い方などを、ドコモカテゴリートップページでは整理して紹介しています。
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